家づくりコラム

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ゼロ・エネルギー住宅はなぜ普及に苦戦しているのか?

明星光紀

どこに予算を回すのか?をしっかり検討してみましょう

国が力を入れて普及させようとしているゼロ・エネルギー住宅(以下:ZEH)。この言葉を聞いた事がある方も多いと思います。では、ZEHとはどのような住宅のことを指すのでしょうか?

大まかに説明すると以下の3つの条件を満たす住宅の事をいいます。

ZEH(Z=ゼロ、E=エネルギー、H=ハウス)

上記のように使う量(料)と作る量(料)を差し引いてゼロになるような住宅をZEHという訳です。最初に書いたように国はこの住宅を普及させようと色々な取り組みをしていますが、正直なかなか普及していません。その証拠はZEHビルダー登録という制度から見てもわかります。

この制度はZEHビルダーとして登録すると、補助金対象業者(ZEHを建てると性能内容によって補助金をもらえる制度)となる事が出来るもので、登録する際に自社で建築する50%をZEHにします。という目標を立てます。

しかしながら、登録した業者さんのほとんどが1棟も建築していないのです。(参考までに弊社は出来ないものを誓うのも抵抗があるので登録していません。)

たしかに住宅としては素晴らしいものではあるし、弊社も過去1件建築させてもらいました。素晴らしいのに普及しないのは【どこにどのようにお金を使うのか?】をしっかり建築主さんや住宅メーカーが考えているからだと思います。

補助金を利用する為には公募期間に申し込んで、認定してもらわないといけません。たとえもらえたとしても70万円程です。正直、日頃の業務で忙しい住宅メーカーはゼロ・エネルギー住宅である旨を証明してもら為(公募提出用)の書類を外部の会社に依頼しているところが多く、費用も20万円程度かかるはずです。

さらに太陽光発電システムで200万円くらいかけてしまった場合、完全に足が出てしまうのです。(太陽光以外にもコストアップする要素(第一種換気の採用等)はあります。)もちろん、入居後には売電収入もあるので、出た足の分は売電費用でまかなってくれるという考えもあるかもしれません。しかし、年々売電単価が減っていくなかで、数年前ほどの魅了は太陽光発電システムにはないと思います。(この件についてはまた詳しく書きます。)

これらがZEHが普及しない理由だと私達は思っています。さらに思うのは、ZEHにする為に機械設備に多額の予算をまわすのであれば、補助金はもらえなくても、躯体(断熱性能等)にお金を費やすべきという事です。機械設備に比べれば断熱材のコストアップ費用は知れています。そして、入居後の快適性が増し、暮らしが豊かになります。

これは現在の考えであって、これから機器の低コスト化や新商品の開発等によっては変わってくるかもしれません。しかし、今はこれがベターだと思うのです。一生に一回の家づくり、後悔のないようにしっかり検討してみてくださいね。